原油安による危機
原油安による危機
止まらない原油安が世界市場に暗い影を投げかけています。原則的に原油安は日本の
ように資源がない国にとっては歓迎されるものなのですが、産油国にとってはそれ
は、全く逆で、石油企業の採算割れによる破産のリスクを絶えず背負うことになり、
総じて、原油安は世界の株価を押し下げる圧力になります。
市場関係者の脳裏には、1980年代と1990年代に起きた「石油危機」がよぎるようで
す。一つは、1986年に起きたもので、それは、米国の「石油の州」であるテキサスの
貯蓄金融機関(S&L)の連鎖破綻です。これは、同地域で不動産融資を拡大していた反動
で起きたもので、その影響は、1990年代前半まで続きました。
もう一つは、1996年以降の原油安がロシアの財政を悪化させロシアの通貨ルーブルの
通貨危機を招いたことです。これにより、大物トレーダー、ノーベル経済学賞を受賞
した学者、元米連邦縦鼻理事会(FRB)高官を要した米国の大型ヘッジファンド、LTCM
の破綻です。
世界の景気にとって原油安は経済の追い風にこそなれ、逆風にはなりません。しか
し、投資家にとっては目先に危機があれば、将来的には経済の追い風であってもそん
なものは全くとるに足りないものになってしまうのです。
例えば、最近では、コンピュータによって相場の流れに応じて瞬時に取引を行う超高
速取引(HFT)が普及しているために、ファンダメンタルではなく、そのときの相場の流
れで取引が行われるために、世界の株価が下落する原因となります。
実際に、世界の株価は現在、下落傾向です。何といっても現在の原油価格がどこまで
下落するのか全く見通せないことにより、いつまでも株価は下落を続け、ロシアをは
じめとする産油国の財政にとっは悪影響を及ぼし続けています。失際にルーブルは下
落していて、ロシア発の危機の危険性が高まっています。
とはいえ、資源がない日本にとっては原油安は願ったり叶ったりで、株式投資を行っ
ていない多くの日本国民にとっては、株価安はほとんど関係ないものでしかなく、ま
た、それが健全とも言えるのです。目先株価が下落しても何も日本は焦る必要はな
く、唯、産油国の危機に対して十分な準備を取っておくことが肝要に思えます。