G7
主要七か国(G7)首脳会議(サミット)は6月7日の夕食会で外交政策に関して議論しました
が、そこでドイツのメルケル首相は南シナ海での中国の岩礁埋め立てについて「一方
的な現状変更に強く反対する」と問題を提起し、そのようにG7での認識で一致しまし
た。また、ウクライナ問題でも国際法を尊重し、停戦合意が履行されない限りロシア
への経済制裁は続ける方針を確認しました。
中国の海洋進出に関しては、メルケル首相が問題を提起し、安倍信三首相に発言を求
め、安倍首相は「東シナ海や南シナ海で緊張を高める一方的な現状変更の試みは放置
してはならない」と表明しました。各国首脳は中国の海洋進出という膨張主義に関し
ての危機を共有し、威嚇や武力を強く反対し、紛争の平和的な解決と海洋の自由を重
視することで一致しました。
中国の海洋進出という野望を現状のまま容認することは中国に間違ったシグナルを送
ることになり、G7での安倍首相の表明は当然と言えます。また、この中国の海洋進出
が開催国のドイツのメルケル首相からの問題提起という形は、日本が望んでいた狙い
通りといっていいと思います。しかし、中国に関しては欧州各国はアジアインフラ銀
行(AIIB)への参加等、日米との温度差があり、必ずしもG7での危機感が共有されている
とは言い難いのが実情です。
また、ウクライナ問題では、安倍首相は「力による現状変更には毅然として対応しな
がら、ロシアとの対話継続が重要だ」と述べました。G7に先立つ米独首脳会議で、オ
バマ米大統領とメルケル首相は会談していて、ウクライナに関しては「制裁期間はロ
シアの(停戦)合意の完全な履行およびウクライナの主権に対する尊重次第」との声明を
出しています。
来年のG7は日本の三重県の伊勢志摩で行われることが先日発表されましたが、果たし
てその時までに中国の野心とロシアの野心が止んでいるのかと問われれば、それは
「否」と答えるのが普通だと思います。つまり、ロシアと中国対日米の構図に欧州各
国が冷めた目で見ていると言った状況は一年経っても変わっていないというのが妥当
だと思います。