アジア投資銀行、中国が拒否権
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立最終案の全容が明らかになったと
報じられています。それによりますと、資本金一千億ドル(約十二兆四千億円)のうち、
中国の出資額は二百九十七億ドルで三十%近くを占め、設立国の中では最大となりま
す。中国は組織運営を決める議決権でも二十五%を超え、増資などの重要案件で事実
上の拒否権を持つことになっているのです。つまり、AIIBは中国が圧倒的な力を持つ国
際金融機関になるということなのです。
また、設立協定案では資本金のうち七十五%分がアジアなどの三十七か国の域内の
国々に、二十五%分を欧州などを含む二十か国の域外国が配分します。各国の出資額
は、中国の次がインドの八十三億ドル、三位はロシアで六十五億ドルとなっていま
す。
域外ではドイツが四位にとどまるなど、英国の参加表明で雪崩を打ったように参加表
明をした欧州勢は多勢に無勢のような格好になっています。ちなみに、英国は十番目
の出資国です。
議決権は出資比率に応じて算出されます。設立協定案には各国の議決権割合は記され
ていないのですが、中国が二十五%を超えるのはほぼ間違いないようです。理事会の
構成変更や増資、総裁の選出など、最重要と位置付けられることを決めるには議決権
が七十五%以上の賛成を必要とすることから、実質的に中国が拒否権を持つものとな
ります。
しかし、この設立協定案を見る限り、AIIBに日本が参加しなくてよかったと思う人がた
ぶん、大勢に思います。中国のみが拒否権を持つ国際金融機関に日本が参加しても、
金をせびられるだけで、何の利益にならないのは火を見るよりも明らかです。また、
設立協定案を見る限り欧州は完全に冷遇されています。この設立協定案では中国の暴
走を止められることは欧州各国にはできず、中国と域内各国により、粛々とインフラ
投資の投入は決められてゆき、欧州の意見が反映されることはたぶん、微塵もないよ
うに思います。それが、欧州が払う代償なのです。
更に設立協定案ではAIIBは「参加はオープン」と参加を見送っている日本や米国に対し
ていつでも参加可能なことを謳っています。しかし、日本はAIIBに急いで参加する必要
性はほとんどなく、しばらく中国とAIIBのお手並み拝見でいいと思います。